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アイドル アニメ

ライブ感とは何か。リアル、アニメ、ゲーム、そしてVRで見るライブ

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はじめに

皆さんはライブを見たことがあるでしょうか。
行ったことがない、という人でも、たとえばテレビCMやニュースなどで、少しぐらいは映像として見たことはあるのではないでしょうか。

2018年、「ライブ体験」というものが新しい段階へと進化しつつあります。
いま、ライブとは何であるのか、ライブをどう感じるのか、という点を改めて考え直す時期が来ています。

リアルのライブ

まずはじめに、ホンモノのライブ、つまり、アーティストが現実の会場に立つライブについて掘り下げていきます。
ここでは、近年の体験形態を軸に、以下の3パターンに分類してみます。

  • 本会場で見るライブ
  • ライブビューイング会場で見るライブ
  • 自宅で生配信を見るライブ

本会場

なんといってもライブの花形、本会場です。
ふつう、「ライブを見る」と言えば本会場でしょう。
このあとに語るすべての形式は、本会場で見るライブの模倣をベースとしており、本会場こそが、「ホンモノのライブ」であります。

さて、わたしたちがライブを見に行くとき、どんな体験ができるでしょう。
ライブ参加は一日をかけた総合的な娯楽体験です

まずわたしたちは朝起きます。そして気付きます。今日は待ちに待ったライブ当日なのだと。ライブというのは、朝起きたその瞬間からの体験です。
次に着る服を選び、どのようなグッズを持ち込むかを選定します。
ライブTシャツは物販で買おうか、それとも過去のライブのシャツを着ようか。有志で作った法被があるなら、もちろん法被は欠かせないでしょう。
サイリウムは何本持っていくか。電池式なら、電池は足りていたか。
そういった準備を家で整えてから出発するわけです。

そしてわたしたちは本会場に着きます。するとそこには、同じ想いのもとに集った同士たちが溢れている。
なるほど、わたしたちは一人じゃなかったのだと。こんなにも大きな会場でライブができるのだと。こんなにも多くのファンがこの日を楽しみにしていたのだと、目で、耳で認識します。
流れるように物販に並びます。物販が始まる、始まらない。流れが遅い。買いたかったグッズに完売のお知らせが飛ぶ。近くに並んでいるファンの着ているTシャツが限定品だと気付く。ランダム缶バッジをその場の名前も知らないファンとトレードしてコンプリートする。
次に見るのはフラワースタンドですね。公式の○○がフラスタを出している。各メンバーにそれぞれファンが付いていて、それぞれの花が出ている。あ、俺の参加したフラスタがある。やたら豪華すぎるフラスタがある。それにしても数が多い、何個出てるんだコレ。
こういった体験ひとつひとつが、ライブの想い出になります。

入場して、席を探します。思ったよりいい席だった、悪い席だった。そもそもオルスタだからなんとかいい場所を確保しなきゃならない。角度的に演者の足元までは見えないか、とか。顔を見るのがギリギリだ、とか。このハコは席に角度付いてないから後ろの方だとスクリーンしか見えねぇな、とか。
席にもいろいろです。どの席を手に入れたかによってその後の体験は大きく変わりますが、「ライブをどの席で見たか」というのも、ひとつの大きな代えがたい想い出です。

ついにライブが始まります。

観客の大多数が席に付いた頃。明るかった会場が暗転し、にわかに観客がどよめき始める。公演中の諸注意を告げる影ナレが入る。ふいにBGMの音量が上がる。スポットライトが色とりどりに光り客席を照らし、ループしていたBGMはライブの開始を告げる音楽へと切り替わる。
未だ暗いステージ上に人影が見える。おぼろげに人数や配置、服の輪郭が見て取れる。
ステージを照らすライトが一気に点灯し、大音量で曲が流れる。ライブが始まる。
この時間のために朝から、前の日から、チケットを取ったあの日から準備を整えてきた、待ちに待ったライブが始まる。

好きなメンバーが踊っているのが見える。歌っているのが聴こえる。顔が、手が、服が、足元が見える。
メンバーが煌めきの中で踊っている。この日のために練習をしてきた成果であることが感じ取れる。
多くのメンバーが居る。自分は、たった一人の推しをずっと見ていてもいいし、次々と変わるメインヴォーカルを追いかけてもいいし、全体の配置を俯瞰的に確認してもいい。それがライブです。それが本会場です。
CD音源ではない、今この瞬間のメンバーの喉から出る声が、手に持つマイクを通して聴こえてくるのが分かる。
天井から吊り下げられた象の牙のようなラインアレイスピーカーが大音量を轟かせ、観客の体全体を震わせる。

一心不乱にパフォーマンスに見入り、そして、自分の手にあるサイリウムを振ることで、演者へと自分の想いを伝える。
ライブにとって、サイリウムとはステージ上の演者と客席の観客を繋ぐコミュニケーションツールであります。
ファンとは、観客とは、群体です。一人一人では小さな存在ですが、たくさんのファンが寄り集まり、色とりどりのサイリウムを振るとき、それは一個の大きな存在として、演者へと想いが届くのです。
会場中に光るサイリウムの、その光る点一つ一つが、生きた人間の「想い」が詰まった輝きなのだと。それはきっと演者に伝わっているのだと、私達はそう信じているのです。
「私達がここにいるのだ」と、「私達があなたたちを応援しているのだ」と、そういうメッセージが、サイリウムの輝きの一つ一つに宿っているわけです。

そしてライブが暗転する。
どこからともなくアンコールを求める声がする。
狭い会場なら統制が取れた掛け声が。
広い会場は声が広く反響し、なかなか揃わない掛け声が。
長い呼掛けの末にアンコールが始まる。
たとえ最初から予定に組み込まれていたとしても、このアンコールは私達の声によって始まったのだと。

ライブが終わる。
ライブが終わっても、ライブ体験は終わりません。
今のライブがどれだけ素晴らしかったか、どれだけ感動したか。周りの見ず知らずのファン同士で語り合う。
ファン打ち上げが開かれ、見知った仲間同士で感想を語り合う。
あの曲のあのメンバーがどうだった、MCはどうだった。
自分が見たもの、他のメンバーを見ていて見逃したもの、いろんなことを語り尽くす。
終電が近くなり、打ち上げが解散し、家路につく。

そして家に帰って、改めて、「今日のライブは良かったのだ」と噛み締めて眠りにつく。
本会場で見るライブというのは、一日をかけた総合的な娯楽体験なのです。

ライブビューイング

ライブビューイングとは、主に映画館で上映される、「ライブの生中継」であります。
ライブビューイングは、有り体に言ってしまえば、本会場の劣化版、です。

ライブビューイングはあくまで「中継映像をみんなで見る」というイベントです。
その場に演者はおらず、
会場規模は本会場の数十分の一しかなく、
会場にフラワースタンドは立っておらず、物販もごく小規模しかない。
そして、私達の声は、私達のサイリウムの光は、演者には届かない。

しかし、しかしライブビューイングは十分に魅力的な体験です。
はるか遠い本会場に行かなくても、近場の映画館でライブが楽しめる。
周りには同じ想いのファンがあふれているし、中継映像を撮るカメラは演者を大写しにしてくれる。
本会場ではステージ上の人間は米粒程度にしか見えないこともザラですが、ライブビューイングではそんな心配はありません。
席の優劣の差があまり無いこともあり、「本会場のハズレ席に比べればライブビューイングの方が良い」という考えのファンも多数います。
ライブビューイングであっても、サイリウムを振ることはできるし、声を上げることもできる。たとえ演者に声が届かなくても、同じ場に集った仲間たちとその感動を分かち合うことができる。

ライブビューイングとは、「本会場のライブ体験」を擬似的に再現した、しかしニセモノであることを感じずにはいられない、そういったライブ体験なのです。

在宅視聴

近年、動画配信サービスを利用したライブの生中継を行うケースが増えています。

しかし家で見るライブというのは、残念ながら、本会場やライブビューイング会場で見る体験とは大きく異なります。
普段見ているパソコンやスマホの画面に単なる映像として映るライブ会場は、「画面という枠を通して見ている」という感覚を否応無く感じさせます。
自宅では飛び跳ねることも声を上げることもできず、せめてもの気分作りとして部屋の電気を消し、カーテンを閉め、自宅のPCモニターに向かってサイリウムを振る。
つまらないとは言いませんが、しかし、これまでに挙げてきたライブ体験とは、数歩劣った、「お情けで見せてもらっている」という感覚の強いものになります。

まとめ

近年、ライブビューイングや在宅視聴など、本会場に行かずともライブを楽しめる手段が増えてきました。
しかし、「本会場がある」という前提のもとで行われるライブは、やはり本会場で見るのが体験として一番優れている。
そして本会場のライブ体験とは、たった数時間のライブだけではなく、その前後を通した一日をかけた体験であるわけです。

アニメのライブ

この章では、「ライブシーン」を描くアニメの変遷を紹介し、アニメが描くライブとは何か、そして実際のライブ体験との違いは何であるか、という点を掘り下げたいと思います。

ここでは、分類の軸として、作画が2D/3Dどちらであるか、という点から紹介していきます。これは、単に技術的な分類というよりは、「旧来のライブシーン/近年のライブシーン」という区分けであります。

2D作画

音楽ライブをアニメで描くというのは幾度か試みられていたように思いますが、その多くは他のシーンと地続きの、「たくさんある風景の一つ」という扱いでありました。それは、古今問わずです。

そんな中でも、ライブシーンに関して特別な扱いを行う作品が幾つかありますので、それらを紹介しましょう。

超時空要塞マクロス

自分が思いつく限り最も古い、「ライブシーン」というものが物語上大きな役割を持ったアニメがマクロスです。
えー、ごめんなさい。世代でないので詳しくなく、あまり語る口を持ちません。

しかしマクロスは「歌うこと」が重要であり、また、基本的にアーティスト側の視点であり、ファン視点でないことから、ライブ体験という軸ではさして重要な作品ではないでしょう。ファンの人ごめんなさい。自分フロンティア派なんです。

涼宮ハルヒの憂鬱

日本アニメの歴史上、ライブ体験を語る上で外せないのはやはり涼宮ハルヒの憂鬱です。
主人公涼宮ハルヒが文化祭でギターボーカルとしてライブを行う一連のシーンは、まさしく圧巻でした。
明らかに通常コストを超えた労力で制作されており、単純に作画枚数だけで見ても「ライブシーン」にかける気概を否応無く感じさせます。

ギターを掻き鳴らす手指。スポットライトを反射するドラム。絶唱に歪む顔。飛び散る汗。ハルヒの顔を追ってブレる視界。
次第に盛り上がる観客を後ろからナメるカメラ。全てのカットで、「最も見たい場所」を大きく映し続けるカメラワーク。

作中のライブがいかに盛り上がっているか。作中の観客がどこを見ているか。
それを、アニメーションを通して疑似体験させる。
「ライブが盛り上がったよ」という事実を伝えるだけでなく、「視聴者、お前も今、盛り上がる観客の一人なんだぞ」と直感的に響かせてくる素晴らしい作品です。

アイドルマスター

「ライブとはどういうものであるか」を最も的確に、かつ熱意を持って表現した作品がアイドルマスターです。

放送当時、すでに3Dモデルによるライブシーンが一般化しつつある中で敢えてフル2D作画でライブを描ききったという点でもアニメーション的な見所は非常に多いのですが、今回の論点はそこにありません。

アイドルたちにはライブ中ずっと強い光が当たり、ライブが「ハレの舞台」であることを直感的に理解させます。
カメラは目まぐるしく動き、ステージ上のあちこちを映します。それは、観客視点であり、アイドル視点であり、そして、「ライブ映像用のカメラ」の視点であります。
ここには、「アニメーションとしてのハッタリ」と、「実際のライブを数多くこなしてきたコンテンツだからこそできる真実味」が共存します。つまり、実際のライブで見え得るモノばかりが映るのです。

ライブ中にコールの声が入ることもまた、ライブとしてのリアリティを向上させます。
目で、耳で、アニメーションとして伝えられる全てのもので、「アイドルマスターのライブ」を表現しきっているものが、この作品です。

まとめ

いくつか作品を挙げてみましたが、アニメーション作品における2D作画のライブシーンというのは、つまり、「現実のライブ体験をいかに疑似体験させるか」という方向での進歩をしてきた、と言えるでしょう。
アニメを通して、現実のライブの雰囲気を伝えてくるもの。それが2Dライブでした。

3D作画

2010年ごろから、技術の進歩により3DCGを用いたライブシーンが作られるようになってきました。
それらのライブを紹介しましょう。

ひめチェン!おとぎちっくアイドル リルぷりっ

えー、はっきり言いまして、「3Dモデルがダンスモーションを行っているだけ」です。
どこに居るのかもはっきりしないモヤッとした背景に、視聴者を飽きさせないための最小限のカメラワークを入れただけ。
これが2010年、ごく初期の3DCGによるダンスでした。当時、週一回の放送に間に合わせることができる品質はこの程度だったのでしょう。
ライブ体験として語るべき部分はなく、単に「ダンス動画を見せられているだけ」というものでした。

弁明するようですが、リルぷりっは一年後に放送するのりスタ版で3DCGが少々パワーアップし、フレームレートは上がるわ背景は綺麗になるわ脚本は坪田文だわで、当時としてはこれで十分すごかったんですよ。

ラブライブ!

ラブライブ!は長く続くシリーズであり、時期によって技術の進歩が見られる部分も多いのですが。
動画としては劇場版ライブライブ!The School Idol Movieから「僕たちはひとつの光」を挙げておきます。発表時期は2015年。

ラブライブ!の技術的な試みとしては「2Dと3Dの共存」にあります。主に遠景では3Dを使い、キャラクターがアップになると2Dになる。しかしまぁ、これは今回の論点とは外れるため詳しくは省きます。
そして演出的な試みとしては、「視聴者がステージ上の演者と共鳴すること」が挙げられます。ラブライブ!のキャッチコピー、「みんなで叶える物語」が象徴するこの試みは、「視聴者は観客ではなく、グループの10人目のメンバーなのだ」という演出として実現していきます。

ラブライブ!のライブシーンにおいて、視聴者は観客ではない。
これは、「アニメーションのライブシーンから得られる体験」として、全く新しい方向性を開拓します。
ライブシーンに基本的に観客は現れず、グループの努力の結晶たる歌とダンスを、当事者として観劇する。
これは、現実のライブを見る上では決してあり得ない視点です。「アーティストとファンの絆」というにはあまりにも深く、「わたし(観客)とあなた(演者)は同じ仲間である」という、極めて精神的な体験を提供します。
ここに、創作物だからこそ成し得る、新しいライブ体験の種類が誕生しているのです。

アイカツ!

動画はアイカツスターズ!96話より。

アイカツ!のライブシーンは、「ライブを演出する」という意味において、3DCGの強みを十二分に発揮してきます。
暗転したステージに登場し、ライトが灯ると同時にオーラを放つ。そう、アイカツ!のアイドルは、目に見えるオーラを放ちます。
自身の身体が薄明るく光り、周りに虹を漂わせ、ダンスの一つ一つから星が弾ける。
アイカツ!のライブシーンは抽象的です。「アイドルとは光り輝くものだ」という、そういった抽象的概念を3DCGの技術で目に見える形で実現させます。
カメラワークを見ても、アイカツ!のそれは現実的なカメラワークでなく、「映像作品として最も映えるカメラワークを」という意志が感じ取れます。
観客は、観客はどこでしょうか。アイカツ!には観客がいます。3DCGの都合上、のぺっとしたモブではありますが、ステージには必ず観客がいます。視聴者は観客視点でこのライブを見ることができます。
アイカツ!のライブは、「ライブ体験」というものを抽象化し、しかし視聴者に確かなライブ体験を提供してくれるのです。

プリパラ

プリティーシリーズを代表してプリパラ129話より。

プリティーシリーズのライブは、特にプリパラのライブは「(作劇上)面白ければ何でもあり」です。
他作品ではとてもアイドルたり得ないふくよかな女性(婉曲表現)が猛烈なヘドバンをかますことも、画面外から脈略を無視した割り込みをかけることも、客席から大声で汚いガヤが飛ぶことも、すべてが許されています。

視聴者は、この自由極まりないステージに割り込む術を持ちません。しかし、しかしです。視聴者は客席に立つことができます。そう、視聴者は客席でガヤを上げる観客の一人になることが認められているのです。
アニメーション中と同じように、汚いガヤを飛ばして良いのです。
それがこちら。通称「おうえん上映」と呼ばれる、劇場版作品の特殊上映回です。

この場に参加した観客は、劇中と同じ色にサイリウムを光らせ、劇中と同じコールを入れ、劇中と同じようにキャラクターに汚いガヤを飛ばすのです。
これは単なる「アニメ映像を使ったライブビューイングもどき」ではなく、アニメーション作品の内外の垣根を限りなく下げ、自分がアニメの中に入り込む錯覚すら覚える特別な体験です。

まとめ

3D作画のライブは、2D作画よりも精神的な進歩が見られました。すなわち、「現実のライブの再現」という枠を超え、「3Dアニメーションだからこそ成し得る、全く新しいライブ体験」の創出へと至ったのです。
「現実のライブ」と「アニメーションのライブ」という2つの存在において、アニメが先行してライブ体験を与え、現実のライブがアニメの再現をするという主従が逆転した現象が起きているのです。
ここまでが、いまアニメーション作品を通して起きているライブ体験の変化であります。

ゲームのライブ

本章では、ゲーム作品に登場するライブと、ライブ体験について触れていきます。
前章がアニメーションという100%受動的な体験であったのに対し、ゲーム作品では受け手はプレイヤーとして能動的な行動を起こしていきます。それらは、ライブ体験にどう作用するのでしょう。

スペースチャンネル5

ライブでゲームだというとハズせないのはスペースチャンネル5。
プレイヤーの操作で3Dモデルが踊る、というモノを実現したごく初期のゲーム作品です。
音ゲーという意味ではパラッパラッパーもハズせないんですが、3Dモデルというにはあまりにもペラッペラなので今回はスペースチャンネル5から話をすすめます。

スペースチャンネル5が描くのは、実際にはライブではなくTV番組であるんですが、キャラクターが踊っている姿を見て楽しむという意味では多くが共通しています。
本作ではプレイヤーは主人公うららに成り代わり、ボタン入力でダンスを踊りつつ宇宙人を倒すわけです。
つまり、プレイヤーはダンスをする側である。プレイヤーがダンサーである、という方針を取る音楽ゲームの極地がダンスエボリューションであり、最新作としてDANCE RUSHがアーケード稼働中です。

アイドルマスター(アーケード版)

前章に続く二度目の登場、アイドルマスターです。
アイドルマスターは「プレイヤーはライブを見る立場である」という方針をとった(おそらく)最初のゲームです。
ここに「ライブを見る」という受動的な体験と「ゲームをプレイする」という能動的な体験をどう結びつけるか、という問題が生じます。
まさか今どきアイドルマスターを知らない人はいないでしょう。そう、プレイヤーはプロデューサーという立場を取り、アイドルを教え導くことでゲーム性を作り上げているわけです。
そこから生まれる圧倒的当事者感。アイドルとの連携が上手くいっていなければ、オーディションには失敗し、ライブ本番ではすっ転び、思うようにファンを獲得できないままゲームはエンディングを迎えていくわけです。
こうして、アイドルマスターは「ライブを見る立場」と「ゲーム性」の両立に成功したわけですね。

アイドルマスター(LIVE FOR YOU!)

三度目の登場、アイドルマスターよりTHE IDOLM@STER LIVE FOR YOU!。通称L4Uですね。
いやー、アイマスって偉大ですね。

今作はアーケード版とは打って変わって「ライブシミュレーション」を公称するゲームです。
ゲーム性としては音ゲー…にあたるんですが、この作品を音ゲーとして語るのはナンセンスです。
L4Uはライブを作るゲームです。

どうユニットメンバーを構成するか、歌、ステージ、衣装はどうするか。
カメラは誰を撮影するか。アングルはどうするか。
そういった、ライブを形作る要素の一つ一つをプレイヤーの手で組み換え、ライブそのものを自由にコントロールして楽しむことができる。
「僕の考えた最強のライブ」を見ることができるのが今作なのです。

ライブとはイチから自分で作るものだ、というスタンスに立ったこのL4Uはライブを扱うゲームにとって革新的でした。
ちなみに裏技でステージをブルーバックに変えることができたこともあり、黎明期のニコニコ動画で一大ジャンルであったアイマスMADを支えたのも本作(と箱○版無印)であります。ほんとアイマスって偉大。

初音ミク -Project DIVA-

言わずとしれたミクさんです。
DIVAもまたライブをするゲームではなく、映像は「PV」という扱いなんですが、このゲームが切り開いたものもまた大きいのでご紹介。

PVを背景動画にしつつ、それをそっちのけで全く無関係に音ゲーをプレイさせてくる点。好きなキャラクター、衣装、アクセサリーを自由に選択できる点。
前述のL4Uと同じ要素である、といえばそれまでかもしれませんが、L4Uがアイドルマスターシリーズのファンディスク的ポジションにあったのに対し、DIVAはVOCALOIDの初ゲーム化作品として非常に高い認知度を持って業界に受け入れられました。
その結果、2009年にPSP版が発売されて以来、最新作Future Toneが2016年に発売、アーケード版もなお稼働中と高い人気を保ち続けています。

ミラクルガールズフェスティバル

本章のトリを飾るにはいささか古いのですが、ミラクルガールズフェスティバルを外すわけにはいきません。通称みがるです。
本作のプレイヤーはゲーム内のライブイベント「ミラクルガールズフェスティバル」のディレクターとなり、ライブを成功させるため、セットリストを組み、ステージや衣装を決定し、そして、音ゲーをするわけです。
アイドルマスターとDIVAのあいのこみたいですね。実際、音ゲー部分のゲーム性はDIVAのコンパチです。

本作を是非とも取り上げなければならない理由は、ライブにかける異様な「熱意」にあります。
ライブが始まれば色とりどりのサイリウムが振られ、オタクからの熱いコールが飛び、出演者はときに踊り、ときに駆け回り、ときにゴンドラに乗って宙へ飛びたつ(?)。カメラワークを始めとしたライブ演出も非常に凝ったものでした。
通常は音ゲーとして常識的な範囲に尺が切り詰められた曲でプレイするのですが、4,5分に渡るフル尺版が全曲に用意されていたりと、もはや音ゲー部分は飾りであり、ライブを見せたいんだという確かな熱意がありました。

広義なジャンルで言えば「版権モノ」であることは確かなのですが、一人ひとりに魂が宿っているのを感じる素晴らしい振り付けであり、スタッフの極めて強い熱意を感じざるを得ませんでした。

まとめ

ゲームでライブをする、というとき。現実のライブとの違いはなにか。アニメーションのライブとの違いはなにか。
それは、「プレイヤーがライブ運営の当事者側になる」ということと、「ライブの構成要素を自由に組み替えることができる」ということにありました。
ゲームを通じたライブ体験とはすなわち、「ライブを作る立場に立つ」ということであり、「自分の思い描く理想のライブを作り、それを見る」ということであるのです。

VRのライブ

時代はVRへと移り変わります。
VRで得られるライブとは、ライブ体験とは何なのでしょう。

初音ミク VRフューチャーライブ

いきなり正解ドン、って感じですが。初音ミクさんのVRフューチャーライブです。
実は私PS4もPSVRも持ってないので実際に見たことはないんですが。

えぇ皆さんお分かりの通り、VRでライブということは、ライブ会場がどれだけ広かろうと、あなたはライブの最前席にいて、あなたの横には別の観客がいて、あなたはその気になれば自由な視点からライブを眺めることが許されているんです。
そしてライブ自体もVRなのですから、空中にオブジェクトが浮かんだり消えたり、そういうバーチャルな演出がやりたい放題なわけです。
すでに現実のライブの模倣という枠から半歩踏み出し、VRならではのバーチャルなライブという概念を獲得しつつあります。
ここに新しいライブ体験が生まれた!終わり!この記事終わり!!
…と、してしまっても良いんですが。まぁ、もう少し続けましょう。

Hop Step Sing!

続いてご紹介するのがHop Step Sing!です。このコンテンツはVR業界の共用コンテンツ的な色合いが強く、VR系の技術実証で利用したいという要望であれば、しかるべき窓口を通して問い合わせれば快く承諾いただけるようです。

さてコンテンツとしては、「ライブ体験」というよりは「3D空間ごと見られる映像作品」という方向性が強いです。
さまざまな場面へとくるくる移り変わりながら、歌い踊るアイドルを見ることができます。
一方で動き回ることに関しては制限が強く、あまり自由に動けるものではありません。
「視聴者がどこにいるか」をしっかりと固定して作られた作品となっているわけです。
VRライブの体験方法の一つとしてこういうのもあるのだな、というところですかね。

ポッピンQ VR体験(終了)

突然湧いてくる終了済みコンテンツ。申し訳ありません。語らせて。
2016年劇場公開アニメーション作品「ポッピンQ」のプロモーション用に作られた体験用VRコンテンツです。
2016年末よりドスパラのVR体験コーナーで体験することができました。

本コンテンツの特異性は「視聴者が完全に幽霊状態であること」です。
メタ的にどういう意図があったのかはさておき、体験者はステージ上にいきなり立たされ、眼の前で五人の女子中学生がダンスを踊る姿を見せられます。
そうです、本コンテンツは、体験者がステージの中に立ちます。
仮に演者と衝突するようなことがあれば、演者は体験者の体を突き抜けて動きます。
また、体験者は自分の足で自由に動き回ることができますし、コントローラを使って任意の位置へ瞬間移動することもできます。
おとなしく見やすい位置で見ることも、踊る演者を後ろから眺めることも、目の前まで迫って頭に手を置くこともできます。まあ手を置いてもすり抜けますけど。

ライブ中にステージに上ることが許される。これもまた、VRならではの体験ではないでしょうか。

まとめ

VRで体験するライブというのはまだゴールが見えていないものの、しかし大まかな方向性と可能性はすでに示され始めてきました。
それはつまり、「体験者はライブの観客である」という点と、「自由度が高い」という点です。
現実のライブでは許されていない、物理的な意味や安全面の考慮という意味で許されていない行為が自由にできるのが、VRでのライブなのでしょう。

最終章 これから

これから先、ライブ体験はどのように変化していくのでしょう。
Cluster.やVR Chatの普及により、「生配信するVRライブ」というのはおぼろげながら実現しつつあります。
観客動員数を増やすことの技術的・金銭的な難しさや、現実のライブがもたらす総合的なライブ体験と比べた感覚的な見劣りなど、超えなければいけない壁はまだまだ多いのが現状ですけれども。

しかし5年後、10年後の未来、バーチャルな世界で体感するライブはほぼ確実に存在するでしょう。
その未来へつながる道は、2018年の今から続くもののはずです。
生配信VRライブへの試みは、いくつかのベンチャー企業ですでに始められています。
いま新しく生まれようとしている新たなライブ体験が、どうか大きく花開くものであることを祈ります。

-アイドル, アニメ

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