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「夜明け告げるルーのうた」の感想がむずかしい

投稿日:2017年5月20日 更新日:

湯浅監督の新作アニメ映画「夜明け告げるルーのうた」が昨日公開になったので見に行ってきました。
約2時間にわたるボリューミーな映画でただただ圧倒されたので、感想を書きたいと思います。

以降、話のネタバレは書きませんが、一部「見るヒント」になるものがあるので、映画館に通うつもりの方は読まない方が良いです。

ちなみに自分は、作品の前情報をなるべく得ずに見る派なので、「○○を読めば書いてある」なんてものもあるかもしれないです。

もくじ

簡潔な感想が出せない

「夜明け告げるルーのうた」に対して、したり顔で専門家のフリをして、「湯浅監督作品だよな!」言って切り捨ててしまうのは簡単です。
ただそれでは何の感想も言っていないのと同じなので、もっとちゃんとした感想を言いたいのですが、これがとても難しい。
ついさっき見た映画の感想が言い表せない。これは非常にもどかしいです。

「普通の映画の感想」から考えてみる

ふつう、映画を見たらどういう感想を持つでしょうか。
「楽しかった」「感動した」「ハラハラした」「考えさせられた」「登場人物に共感した」「世界観が良かった」などでしょうか。
悪評も感想のうちとすれば、「見どころがなかった」「話が薄っぺらかった」「展開がダルかった」「ストーリーが理解できなかった」などなど。
アニメ映画特有の観点としては「作画が凄かった」「声優の演技が良かった」などもあります。

では「夜明け告げるルーのうた」は、上記のどれにあてはまる作品かと言うと、さて、どれに当てはめて良いのかわからない。
どの要素も少なからずあったものの、例えばじゃあ「夜明け告げるルーのうたは、いろいろ考えさせられる映画だった」という感想を出して、その感想でこの映画の本質を伝えることができているかというと、全く本質が伝わっていない感想だと思う。

こういう言い方をすると、「話がとっ散らかっている」のかな?という印象を与えてしまうかもしれないのだけど、決してそうではない。ただ、ありふれた感想の常套句から、この映画の感想を選び出すことができないんです。

映画の持つメッセージは何だったのか

「映画には作り手が伝えたいメッセージが込められている」という考え方があります。
鑑賞者の立場から、「映画は見ることによって何かを得ることができるものだ」と言い換えることもできます。
人生の教訓を得たり、物の見方や考え方が変わったり、もっと単純に「見ると元気になる」なんてものでも良いです。

「夜明け告げるルーのうた」は、この観点からも感想が難しいです。
何かを受け取ったような気がするし、何も受け取っていないような気もする。
じゃあメッセージの無い単純娯楽作品なのかというとそうでもない。
やはりなにかあった気がするのに、自分はそれを受け止められていない。

作品世界はどう変化したのか

「この作品は何であったか」を考えるために、「物語が始まる前の作品世界」と「物語が終わった後の作品世界」を比べて、「物語を通してどんな変化が得られたのか」を突き止めるのは重要です。
冒険モノなら「世界が平和になった」、恋愛モノなら「主人公達が付き合い始めた」など。

この部分はネタバレの要素が強いので明言しませんが、夜明け告げるルーのうたには、主人公の内面と舞台の両方に大きな変化が起きます。
この変化はとても大きなものかつ互いにリンクしているので、この点が今作の物語としての結論であることは間違い無いでしょう。また、最後の遊歩の台詞もそれを象徴しています。

ただ、しかし、物語の結論がそこにあるとして、二時間にわたるストーリー全てがその結論のために描かれていたかというと、「果たしてほんとうにそれだけか?」と思ってしまいます。映画を見た方には伝わるでしょうが、エンドシーンには本来描かれて然るべきものが完全に抜け落ちていますし、「何かが明確に解決した」というわけではないので。

結局どういった感想を持ったのか

「夜明け告げるルーのうた」は、見終わったあとにどう論じて良いのかを非常に迷ってしまう作品でした。
今こうして書きながらも、まだ何を言えば言い切ったことになるのかよくわかりません。

ただ伝えることができるのは、この映画は「物語を見るのが好きな人」には老若男女問わずオススメできる作品であるということと、他のどの映画にも似ていないということ。特に、題材が似ている「崖の上のポニョ」とは全く別物であることを明言しておきます。

そういうわけなので、興味のある人はぜひ映画館に足を運んでみて頂きたいですし、「俺はこの映画を見てこんな感想を抱いた」というのを共有していただきたいです。

-アニメ

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